仙台ひとり旅 往路

仙台まで一人旅をした。

土井晩翠の詩に詠われている「広瀬川」を見たかったこと、そして、常磐線が仙台までつながったという話を聞いて、一度本当につながっているのか確かめたかったから。

初めての鈍行旅だった。行く前日は途中で嫌になってしまうのではないかと不安だった。まあ嫌になったら途中まで行って帰ってくればいいや、帰り嫌になったら新幹線に課金して途中から帰ってきちゃお、と思って気軽に出かけた。片道だって元を取れる切符だもの。

朝の4時半に目を覚まし、始発電車で北へ北へと向かう。途中までは日常の延長のようだったけれど、北へ向かうにつれ、次第に日常が薄れていく。うつらうつらと眠りに落ちては目を覚まし、持って行った大好きな本を読み進め、またうつらうつらと眠りに落ちる。何度も繰り返しているうちに、茨城を抜け、福島県に入る。

大野、双葉、浪江…福島県内の駅名は、9年前の原発事故を思い出すもの。地図を見ると、まだ帰宅困難区域に入っているところもある。夜ノ森駅の周りには、立ち入り禁止区域も残っているという。

そんな暗い記憶とは裏腹に、その日の海は美しかった。あの周辺の海岸を象徴するように、暗いトンネルに入っては視界が開けて海が見えた。そんな穏やかな日々を、あの震災が奪ったんだと思うと、なんともいえない気持ちになった。

原ノ町駅から仙台行きに乗り、仙台についた。「本当に常磐線だけで来てしまった」という驚きと、7時間電車を乗り継いで到着したという達成感が、なんとも心地よかった。