鎌倉寺巡り vol.1【鶴岡八幡宮から建長寺へ】

鎌倉寺巡りに行ってきた。

はるか昔、雨の中行った記憶しかないのは切ないし、最近見た映画に鎌倉が舞台のものがあった。だから、晴れた日の鎌倉に行き、鎌倉の空気を吸いたかった。古くからの妖気が溜まっているという鎌倉へ、一人、足を延ばす。

声をかければ一緒に来てくれる友達はいたかもしれない。だけど、ひとり旅に対する憧れがあった。なんの気遣いもせず、ただただ自分の行きたいところを回る旅にしたかった。

そしてもう一つ、できる限りスマホからは離れた旅をしたかった。写真はカメラで撮る、そして、紙の地図を頼りに歩く。

自宅から2時間半かけて、鎌倉駅へ降り立つと、そこはすでに観光客で賑わっていた。観光案内所で地図をもらう。バスのフリーパスを使って回るか、徒歩で回るか、はたまたレンタサイクルをするか。バスは来るまでが退屈だし、自転車では坂道が大変だ。お金を使わず、一日歩くという選択肢を選んだ。

まずは有名な小町通り若宮大路を通って鶴岡八幡宮へ。お参りをして旅の無事を祈り、おみくじを引いて運を試した。末吉。もしかしたら今の私には一番、希望の持てる結果だったかもしれない。

この後私は北鎌倉に向かって歩く予定だったのだが、北鎌倉まで行けば昼食を取れるところはなさそうだ。小町通りで手頃な店を見つけ、そこで私にしてはとても贅沢な昼食をとった。(海鮮丼)

大きな通りを歩いて建長寺へ。北鎌倉へ向かう道は、地図には大きく載っているけれど人気はない。外国人などとすれ違うが、時たま不安になる。本当に合ってるだろうか…?誰かに話しかけてみようかとも思ったけれど、そんな勇気もなく、道があっていることを祈りながらひたすら長い、緩やかな坂道を登って行く。

鎌倉は北・東・西の三方を山に、南を海に囲まれ、防御に適した土地である。市街は平野だが、北に向かうにつれ、徐々に山道になって行く。この坂を登りながら不安にはなったけれど、後からこんなの序の口だったのだと知ることになるが、それは後述しよう。

閑話休題。もとの話に戻る。長いこと歩いて、建長寺に着く。大きな寺だ。歴史的にどんな意義のある場所なのかなんて忘れてしまったけれど、今回の私の旅にそんなものは必要なかった。ただ旅の情緒と、景色の美しさがあればそれでいい。

私がはるか昔に行った時は大雨で、この寺の静けさから、来たことを後悔したほどだった。旅程が予定通り遂行されることが一番大切で、私にとって、「きた」ということが一番大切だった。門の前に来た時点で多分満足だったのだろう。

一人で、晴れた日に、そして大人になった私は、そんな記憶を辿りつつ、拝観料を払って寺へ入った。

相変わらず、静かな寺だ。何人か写真を撮っている人がいる。私もその中で、小さなカメラで写真を写してみた。多分彼らには敵わないけど、それっぽい写真が撮れた。

大きな門がある。確かこれはなんか日本史の教科書に出て来たような気がする。大きくて、シンプルで、立派で、凛としている。門の下で、まじまじとその門を眺めてみる。澄んだ空気、しんとした山と気配、それから武家の気風を象徴するような門。それだけで、ここ鎌倉へ来てよかったと思った。

寺の中へずんずんと歩く。誰も私を引き止めないし、誰も私の話を聞いてくれる人はいないけど、それでいい。それがいい。

本殿に、仏さまがいらっしゃる。鎌倉で、何体もの仏さまにお会いしたけれど、不思議なことに自然と、手を合わせてしまう。特に信心深いわけではない。博物館なんかではまじまじとみて、後ろへ回っておしりをみて喜んでいるような人間である。何を願うわけでもない。願い事も思いつかなくなった。ただ、お会い出来て良かったです、お会いさせていただいてありがとうございます、という気持ちを込めて。様々な仏さまに、何度手を合わせたかわからない。

建長寺を後にして、円覚寺へ向かう。行きたいところはたくさんある。